- 岡本 洋平
第9回 ティール組織と企業の理想像
第9回は最近話題のティール組織を中心に、企業としての理想の姿をご説明します。
従来の企業は、主にトップダウンのピラミッド型組織を構成し、売上目標や利益目標の数字を達成することで成長を遂げてきました。
ある程度自律型と言える組織でも、責任や権限の最終的な位置づけではピラミッド型となっている企業がほとんどでしょう。
そんな中で、「ティール組織」という新たな組織体系が提唱され、昨年あたりから急激に話題となりました。
ティール組織とは、簡単に言えば「マネジメントがない組織」です。
自主経営、全体性、進化する目的の3つを要素とし、ピラミッド型ではなく全員が自主的に判断し、目的に向かって進むという非常に珍しい組織体系です。
しかし、現在の企業において完全なティール組織というのは「ほとんど存在しない」ようです。
その理由として、社員全員が「マネジメントを必要としないレベル」まで到達するには、能力や経験だけでなく倫理観や人間性といったものまで兼ね備える必要があり、そのような組織は現実的ではないからであると言えます。
ではティール組織というのは単なる絵に描いた餅であるのか?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、実際はそうではありません。
ティール組織に近い形で経営を行っている中小企業は、私が知っている限りでも数社存在します。
そのような企業がティール組織と決定的に違うところは、「トップが社員のためにフィールドを用意する」ことです。
・自社の存在意義や社員のキャリアパスを設定する
・社員の能力開発や道徳観の醸成につき、本人が希望する形で機会を与える
・社員の自主性に任せながらも、全体の指針と目標は社長が大まかに決める
・数字を基準に、次の目標などを社員に与える
厳密に言えばこれらは「トップ主導のピラミッド型」に見えますが、可能な限り介入を控え、社員の自主性を重視しているところにティール組織との違いが見られます。
自律型組織とも似ていますが、大きな違いは「トップの倫理観・道徳観と、数字による経営、双方ともにバランスが取れている」ことにあります。
例えば倫理観や道徳観だけですと、数字による経営ができずに経営は傾きます。
数字による経営だけですと、倫理観や道徳観が備わっておらず社員は簡単に離職してしまいます。
このように、倫理観・道徳観と数字による経営の双方を兼ね備える社長が、トップダウンの構造を持ちつつもティール組織に近い考えで経営を行っている企業は少数ながら存在します。
そしてそれは、従業員数が少ないほうが容易に行えるため、大企業より中小企業のほうが実現しやすいと言えるでしょう。
今回の流れをまとめると、「ティール組織は現実には不可能に近いが、ティール組織に近いピラミッド型組織はトップの意識次第で作れる」ということになります。
そのためにはトップの倫理観・道徳観と、数字による経営が必要となりますが、それに加えて重要なのはお互いの信頼関係でしょう。
自分だけでなく社員やお客様、地域の皆様が幸せになれるか。
業績という面では遠回りのように見えますが、実際に歩いてみれば近道であるかもしれません。