- 岡本 洋平
第8回 5Sの重要性
第8回は、生産性向上の基本的概念である「5S」についてお話します。
まず初めに、5Sとは「整理、整頓、清掃、清潔、躾」の頭文字を取ったものであり、生産管理における基本的な取り組みとなります。
私は躾という言葉が嫌いで、「(続けるための)精神力」などと言うこともありますが、いずれにしてもこの5Sは「生産性」と直結しています。
しかし、5Sを続けられる企業はそう多くはありません。
一体なぜでしょうか。
その理由の一つとして、「売上や利益との因果関係が見えにくい」ことが挙げられます。
5Sをやったから売上や利益がすぐ伸びる、というわけはないため、その効果が出始める前に辞めてしまう、ということが大きな要因として考えられます。
では、5Sを続けるためにはどうすれば良いでしょうか。
最も確実な方法は、「トップが諦めない」ことです。
トップが諦めずに続けていると、社員は必ず最後についてきます。
しかし当然ながら、1ヵ月や2ヵ月続けただけでは元に戻る可能性が高くなります。
ホワイト企業として選出された某中小企業では、社員がついてこなくても社長と一部の幹部社員で何ヵ月も清掃を続けました。
その結果、他の幹部社員が一緒に清掃するようになり、それに続いて現場の社員も清掃に参加するようになりました。
最終的に定着するまでに、1年もの期間を要したことを考えれば、いかに「5S」を定着させるのが難しいかお分かりになるかと思います。
ですが、だからといって「5S」をやらずに経営改革を謳ったとしても、その成果は中々現れない、または年月が経つにつれて元に戻ってしまうことが予想されます。
それでも「定着させるまでに1年という期間は長すぎる」、そうお考えになる経営者様も多いかと思われます。
そこで、もっと早く効果が表れる仕組みを構築する必要があります。
私がお勧めするのは、「社長が社員と一緒に自社の仕組みを考える」ことです。
これは経営理念や経営ビジョンの策定でも言えることですが、トップと現場が協働で仕組み作りを行うことは、継続性という観点から非常に効果的な手法です。
「自社は何が問題なのか」「その問題に関してすぐやれることは何か」「どうやってそれを続けていくか」
こういったことを一緒に考え、実行していくことで、トップダウンで行うよりも早期の定着が期待できます。
特にその取り組みを継続していくために、「目に見える結果の提示」や、「続けたことによる評価・表彰」といった制度作りは非常に効果的です。
金銭的なもので結果を求めたり評価するのではなく、「これだけ働きやすくなった」ことの可視化、「いつもみんなが気づかないところで綺麗さを保ってる人」への評価など、少しの工夫で社員のモチベーションは持続します。
たかが5Sですが、されど5S。
綺麗でムダな物がない会社や事務所は、やはり皆さん元気で生き生きしています。
生産性を上げるために、まずはすぐに実行できる「5S」から取り掛かってみてはいかがでしょうか。