• 岡本 洋平

第6回 専門人材をどう確保するか

第6回は人材についてお話したいと思います。


本日付の信濃毎日新聞に、AIやIoTに精通した人材の不足が記事になっていました。

特に製造業ではIT人材の不足が顕著で、大手製造業とのITにおけるギャップは大きく開くものと思われます。


ここで少し疑問に感じたのは、不足しているから自社で専門人材を育てたい、といったような声が多かったことでした。

確かに自社でITに精通した人材を育てることができれば、AIやIoTに関して大きなメリットがあるでしょう。

しかしながら一方で、そういった専門人材を囲い込むコストは非常に大きなものとなります。

例えばAIのディープラーニングで最近脚光を浴びているPythonのプログラマーですが、その平均年収は600万円を超える水準となっております。

仮に自社でそういった専門人材を育てることができても、その後長期にわたり自社で働いてもらうためには、それなりのコストを覚悟しなければなりません。


ではここで、例えば製造業の本業とは何でしょうか。

こう問われますと、ほぼ例外なく「物を作って売ること」という答えが返ってくると思われます。

その「物を作って売ること」に対し、IT人材を自社で確保するというのは本業に資するものでしょうか。

確かにオートメーションやAIなどのデジタル技術は製造にとって大きなメリットをもたらします。

しかしそれが企業にとって「コアな経営資源であるかどうか」考えますと、私は違うと考えます。

「コアな経営資源」とは、例えば製造業なら自律的な組織や平準化された技術、QCD(品質、コスト、納期)の絶え間ない改善など、「物を作って売ること」に直接関連性のある組織風土や人材等が当てはまります。

IT人材は確かに必要とされていますが、それが自社内に絶対必要であるかどうかと言われれば、費用対効果の面も含めて絶対必要ではないと言えるでしょう。


それでは今後のAIやIoTの社会に向け、どのように対応すれば良いでしょうか。


仮にIT人材を新たに雇うコストを年間600万円と試算するならば、新たに雇わずその半額の300万円を投資に向け、IT人材に頼らない自社のIT化を進めてみてはいかがでしょうか。

IT化に向けて一番重要なのは「自社がどのような場面でITを必要としているか、どのようなシステムや仕組みを構築したいか」という、いわば要件定義や現場の見える化といった経営の基本的な部分であります。

それを受けてシステムを提供するのはシステムベンダーであり、こちらの部分は自社で専門人材を抱えるより外注化したほうがはるかに効率的となります。

つまりAIやIoTを活用する第一歩は専門人材の育成ではなく、まずは「自社の強みは何か」、「自社はどのような場面で弱みを持っているか」、「強みを活かし、弱みを克服するためにはどのような場面でどのようなIT化が必要なのか」、これらをはっきりとさせることです。

そしてシステム構築はベンダーと共同で行う、または旭鉄工のように自社で工夫してIoTを取り入れるなどが、費用対効果の面では最も大きいと言えるでしょう。


特に中小企業においては、IoTやAIの前にそもそも無料で使えるツールや低額で利用できるツールなどを活かしている企業が少ないです。

まずはこれらを調べ、自社で活用できるツールは活用した後に本格的なIT化を考えてみると良いでしょう。

最新記事

すべて表示

第24回 価格は高いほうが良いの?

第24回は前回にも関係する部分ですが、「価格」についてお話をしようと思います。 「中小企業にとって他社と差別化し、付加価値を高め、価格競争に巻き込まれないことが重要である」 昨今の中小企業における戦略は大抵こうなります。 おそらくどこのセミナーや講演でもこのような内容になるでしょう。 他社と差別化することと付加価値を高めることは正しいです。 しかし「価格競争に巻き込まれないこと」は必ずしも正解とは

第22回 今どきでない人材との接し方

第22回は、前回とは逆に「今どきでない」人材との接し方についてお話をいたします。 私は昭和57年生まれですが、この年代の前後は非常に活発な方が多いように見受けられます。 飲みに行く、ゴルフをやる、休日を楽しむ、趣味に没頭するなど、何事においても前向きな方が多いのではないでしょうか。 それは仕事でも同じであり、この年代の方々は行動に移すのが速いです。 今回はそういった、一見すると何の問題もなく非常に

第17回 逆三角形型の経営

第17回は従来のトップダウン型経営ではなく、逆三角形型の経営についてお話したいと思います。 第9回でも少し触れましたが、中小企業にとって理想的なのは「ティール組織に近いピラミッド型組織」であると私は考えております。 しかしながら、この形態はトップに求められる経営と倫理のレベルが非常に高いため、中々現実的ではないという側面もあります。 そこでお勧めしたいのが、「逆三角形型の経営」です。 従来は社長が