• 岡本 洋平

第24回 価格は高いほうが良いの?

第24回は前回にも関係する部分ですが、「価格」についてお話をしようと思います。


「中小企業にとって他社と差別化し、付加価値を高め、価格競争に巻き込まれないことが重要である」


昨今の中小企業における戦略は大抵こうなります。

おそらくどこのセミナーや講演でもこのような内容になるでしょう。

他社と差別化することと付加価値を高めることは正しいです。

しかし「価格競争に巻き込まれないこと」は必ずしも正解とは言い切れません。

簡単に言えば「価格競争をしても勝てるコスト削減の仕組み」を作れば良いのです。


簡単に言ってますが、実際はそう簡単なことではありません。

ですがコスト削減の仕組みを作らないことは、イコール将来的な脅威に対抗する術を失う可能性がある、ということにもなります。

前回もお話しましたが、みんなが付加価値を高めていけば結局は「同質化」に陥ります。

これが最も顕著なのは飲食業界で、食材にこだわり味が良くても潰れてしまうといったケースが見受けられます。


価格が高いということは顧客の分母が少なくなります。

普段の消費活動に置き換えると分かりやすいですが、いくら美味しくてもランチ2000円もする店にはそうそう行かないでしょう。

いくら素材が良くても2万も3万もする服はそうそう買わないでしょう。

消費者の立場で考えると当たり前のことですが、いざ提供する側に立つとこれが見えなくなってしまいます。


そして同じような店、同じような技術の会社が現れることによる「同質化」は非常に怖い要素ですが、この同質化よりも怖いのは「同じ品質のものを圧倒的に安く提供する」業者が現れた場合です。

こうなると太刀打ちする術はありません。

液晶テレビやスマートフォンはこの典型ですが、中小企業においても「IT化」が容易になったことで今後同様の事例は増えていくでしょう。


ではどのようにすれば良いか。

自社にしかできない技術を見極め、それを磨くことで他社を差別化を図る。

ここまでは従来と同じです。

そしてここからは、「その技術で飛び地を狙う」か「QCD(価格、コスト、納期)全ての面で圧倒的な差別化を図る」かのどちからに進むべきであると考えます。


具体的には、既存の技術を新製品開発に応用することがまず一つ。

これは自社の技術が他分野のどのようなお困りごとに対応できるか?を徹底的に調べることが重要です。

それと同時に新製品開発には多大なコストと時間が必要です。

見切り発車にならないためにも、企画段階で入念なプランを練っていくことが肝心になります。


そしてもう一つは自社の技術を既存の市場へ引き続き投入することです。

ここで重要なのは「選択と集中」、および「QCD全ての改善」です。

選択と集中では「やるべきことの明確化とやらないことの明確化」、QCD全ての改善では「品質と納期の改善は当たり前で、そこからさらにコストを下げる仕組みを作ること」が目標となります。


選択と集中、およびQCD全ての改善の両面を達成できたのが、前にもお伝えした某町工場です。

この会社は職人がいません。

ですがどの社員も皆まんべんなく技術力が高く、そして常に効率化が考えられた最新設備を多く導入しています。

さらに自社で行う業務を「ワイヤーカット」のみに特化しています。

この選択と集中、およびQCD全ての改善を行うことで、小規模企業でありながら大企業なみの平均年収を達成しています。


多くの中小企業では価格面で訴求することをしておりません。

なぜならそれは初めにもお伝えした通り、「価格競争に巻き込まれないため」という意識があるからです。

しかし自社でやるべきことを極限まで絞り込めば、おのずと効率化を図るきっかけにもなります。

そしてAIやIoTなどの先進技術により「仕事が無くなる」のではなく、それらを活用して「さらに効率化を図る」といった考えを持つことが重要です。


このような形で、価格を下げることも「付加価値を高める」要因になります。

例えば原価率60の商品を100で売る、受注から納入までの期間は10日。

原価率50の商品を80で売る、受注から納入までの期間は5日。

前者は1ヵ月で120の利益ですが、後者は1ヵ月で180の利益です。

つまり注文が常に舞い込む仕組み・価格設定と効率化さえ行えば、高い価格設定の時より1.5倍も利益が稼げることになります。

これが経営に最も重要な「スピード」の概念であり、多くのセミナーや研修などでは語られることのない部分です。


当社の行動指針は「シンプルに、迅速に、誠実に」ですが、これもQCDの概念をもとに作成しています。

そしてスピードの面を特に重視していますので、普通の人であれば1ヵ月かかる報告書を1週間でまとめ上げます。

これはそういった仕組みづくりが出来ていることに加え、「スピード」が利益獲得にとっていかに大事か、顧客からの信頼を得るためにいかに大事かを自身に叩き込んでいるからです。


もし効率化がうまくいかないのであれば、まずはゴールを設定してみましょう。

今より作業時間を10%アップさせる、労働時間を30分削減する、それらのゴールを設定することで「じゃあ何をやるか」が明確になっていきます。

効率化は地味な作業ですが、その地味な作業は今後避けることができない大きな「課題」であることを認識していただければと思います。


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