• 岡本 洋平

第23回 あえて売上を減らすという選択

第23回は、ガイアの夜明けで反響を呼んだ「佰食屋」の経営戦略をもとに、「売上を減らす」ことのメリットとデメリットを中心にお話いたします。


従来では考えられないようなことが起きている、これが「佰食屋」の本を読んだ私の感想です。

ご存知ない方もいらっしゃると思いますので、簡単に佰食屋のご紹介をします。

佰食屋はその名の通り、1日100食限定でランチ営業を行っている店です。

メニューは3種類のみ、100食売れたらそこで営業終了となります。

この営業方針は従業員の働きがいを高め、毎日9時に出勤して17時には全員仕事を終えているという「超ホワイト」企業です。


この働き方を実現しているのは、言うまでもなく「100食限定」と「3種類のみのメニュー」です。

これらは仕込みや提供などの店舗オペレーションも単純化でき、新しく入った人もすぐに業務を習熟できるというメリットを生み出しました。


メニューは3品とも1000円と1100円なので、1日の売上は100食売り切って約10万円です。

ドリング類を入れても12万円ほどでしょう。

FLコスト(原価と人件費を合わせたコスト)は80%前後と従来では考えられないような高水準で、つまり1日の売上のうち9万円以上は原価と人件費で飛んで行ってしまいます。

このため、家賃や光熱費等、その他費用に充てることができる利益は月間で約60万円ほどになります。


この佰食屋の戦略メリットは3つあります。


1つ目は、「100食しか提供しない」ため希少性と話題性を打ち出せること。

2つ目は、ランチ営業しかやらないことで従業員の働きがいが高まること。

3つ目は、店舗オペレーションが単純化されているため人材の能力に左右されないこと。


実際に佰食屋はこれらのメリットを最大限に活かしています。


しかし、メリットがあれば当然デメリットもあります。


1つ目は、景気悪化や災害に非常に弱いこと。100食売れないと一気に経営は悪化します。

2つ目は、新メニューを作れないこと。3種類のみで固定客を囲い続けるのは難しいです。

3つ目は、模倣で目新しさが無くなること。外食業界はこれが一番怖いです。


「会社」という実態の無いものがなぜ重要なのか。

それは「お金を稼げない時に自分たちを救ってくれる」からであると私は考えています。

つまりどれだけ素晴らしい事をやっていても、潰れてしまったら何の意味も無いということです。


実際に佰食屋の経営スタイルは、私も素晴らしいものであると思います。

特に「働きがい」という観点からは文句のつけようがない会社であるでしょう。

しかし同時に、会社には「利益」というものが非常に大事です。


例えば佰食屋のフランチャイズで「佰食屋1/2」というサービスが新たに始まっていますが、これは1日50食限定にすることで「家族経営」ができるスタイルとして売り出しています。

しかしFLコスト80%で1日50食というのは綱渡りに近い経営を強いられます。

例えばFLコストを低く見積もったとして、1日5万円の売上のうち原価が2.5万円、従業員1人雇ったとして5千円、この時点で利益は2万円です。

週1定休日だとすると1ヵ月で50万円。

この中から仮に家賃を10万円、消耗品や雑費その他で10万円かかるとすると、収入として手元に残るのは30万円です。


この数字は多いでしょうか、それとも少ないでしょうか。

考え方は人それぞれだと思いますが、一番の問題は「収入は30万円が上限で、景気により20万円にも10万円にも赤字にもなる」ということです。

しかも夫婦2人とも店舗運営に入ってしまうため、共働きもできないことになります。


外食産業で「利益率を高める」というのは並大抵のことではありません。

ですが経営者として、「景気が悪いときも社員を守るために利益を出す」ことは考えなければいけないと思います。

渋沢栄一氏の「論語と算盤」はまさにそれで、論語・算盤のどちらか一方では会社を永続的に続けることは難しいということを示しています。


今後、佰食屋がどのような道を歩んでいかれるかは分かりません。

オーナー夫妻は経営者としても人間としても大変尊敬できる方々です。

だからこそもう少し「利益」を確保する仕組みを作っていただきたいと考えております。



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