• 岡本 洋平

第14回 80点主義の人材、100点主義の経営

最終更新: 2019年9月12日

第14回は人材と経営における「専門性」についてお話をいたします。


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「T型の人材」

この言葉を聞いたことがある方は多いかと思います。


2000年の中ごろから従来のI型人材(専門特化した人材)に代わり、幅広い分野の知見と一つの専門性を保有する人材のことを「T型の人材」などと呼ぶようになりました。


この考えは現在も浸透しており、π型やダブルT型といった「専門性を複数保有する人材」の定義も様々な場面で耳にします。


ここで言う「専門性」は当然100点かそれに近い点数でありますが、大企業であればこのような人材を育てるメリットは多く存在します。


しかし中小企業にとって100点かそれに近い人材を確保するのは、相当な年月と費用をかけることが前提となります。


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では、中小企業にとって100点の人材がいなければ経営は成り立たないのでしょうか?


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確かに製造業で付加価値を高める場合などには非常に高度な専門性が必要ですが、ここで発想を少し変えてみる必要があります。


例えば、従来で考えられなかった新製品や新サービスを作り出すことで「付加価値を高める」のではなく、従来の延長線上にある新製品や既存の製品・サービスの何か一点に集中し、そこで他社に絶対負けない地位を確立することで、経営としての100点主義を目指すというやり方です。


このような経営を目指す上で必要なのは、100点の専門人材ただ1人ではなく80点のスキルを複数保有した複数の人材です。


経営が「個人競技」であるならば個人のスキルは非常に大きなものを占めます。


具体的には属人化している業務を行うコンサルタントや士業、フリーランスの方などが該当します。


しかし数人から数十人の企業では個人のスキルを極めるのではなく、80点に留めて複数のスキルを保有したほうが「効率化」の面で大きなメリットをもたらします。


100点の人にしかできない仕事は当然ながら他の方が受け持つことはできません。


そうなると業務が属人化してしまい、平準化や業務分担が不可能となってしまいます。


ですが80点の人材が複数いれば平準化や業務分担が容易となるため、業績が伸びている企業は積極的にジョブローテーションなどを行い、社員の皆さんに複数のスキルを取得させています。


これは人数が限られている中小企業にこそお勧めの人材育成法であると、私は考えています。


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よく「付加価値を高める」というと、品質を良くして価格を高くすることのみに集中してしまうケースが見受けられます。


しかし付加価値には、Q=品質、C=コスト、D=納期の全てが関係してきます(最近ではE=環境という言葉も聞かれるようになってきています)。


例えば価格を5%引き下げても、品質で10%アップ、コストで10%ダウン、納期で10%短縮すれば、それは付加価値を高めたことにつながります。


そのような付加価値をつけるためには、「1つの分野で100点人材」よりも「複数の分野で80点人材」のほうが適している、ということになります。


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なぜ100点ではなく80点であるのかと言うと、80点までの到達時間と100点までの到達時間は大きく異なるからです。


特に職人技と言われる技術は習得に相当な歳月を費やすため、最初から職人を育てるという取り組みはかなり厳しいものがあります。


しかし、80点であればその数分の1の時間で到達できてしまうため、成長効率という面では非常に優れています。


ですが、職人を育てるのが悪いという意味ではありません。


最初は80点の複数スキルを習得し、その中でさらに極めたい技術や知識があれば100点を目指すといったように、段階を踏んで臨むほうが個人にとっても企業にとっても良い結果となります。


ですので、管理職になるまではとにかくあらゆる分野のスキルを身につけ、管理職の道が開けたらマネジメントに向かうかさらなる専門化に向かうか、をじっくり考えるのが最も効果的であると考えます。


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人材は80点主義をお勧めしましたが、経営はもちろん100点主義が理想です。


ここでの100点主義とは、自分たちの企業が何か一つに優れているという「専門性」です。


しかし何度もお伝えしています通り、100点人材がいるから100点経営ができるのではなく、80点人材を複数抱えているほうが100点経営を行いやすくなります。


例えば、先ほどのQCDに関して社内でワークショップを実施した際に、建設的な意見が出るのは間違いなく80点人材が多くいるケースです。


団体競技でも言えることですが、突出した「個」は逆に周りを委縮させてしまうことがあります。


会社は組織だからこそ、100点人材より80点人材のほうが100点経営を行いやすい、ということを認識していただければと思います。


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本日のお話をまとめますと、

「80点のスキルを複数保有する人材を育てる」、「100点主義の経営には100点人材より80点人材が必要」、「付加価値は品質や価格の高さだけではない」、この3点が特に重要となります。


ですが、人材を育てる前に職場の環境作りをいうものを整備する必要があります。


スキル習得やジョブローテーションも、本人の意思に反してやってしまえば逆に離職を招いてしまいます。


このため、まずはコミュニケーションを見直し、社員の皆さんが前向きに楽しく働ける職場作りから行ってみましょう。

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