
岡本 洋平
第2回 「シンプル」な経営
更新日:2019年5月24日
私は車と時計が大好きなので、新製品などは欠かさずチェックしております。
そして最近チェックした新型車の中で、面白い車を見つけました。
マツダの新型アクセラ(マツダ3)です。
一見するとキャラクターラインを多用せず非常にシンプルなデザインですが、良く見ると面が凹になっていたり面白いデザインを採用しています。
開発でもシンプルであることにこだわったようで、このデザインはとても評判が良いようです。
現代のマーケティングで重要なのは、その製品が「シンプルであるが印象に残る」かどうか、です。
サービス業で言えば顧客が分かりやすく、かつ顧客のベネフィット(便益)に適っているサービスであるかどうか、ということになります。
例えばアップルのiphone。
無駄をそぎ落としたシンプルなデザインですが、発表されてから現在まで爆発的な人気を誇っております。
例えば無印良品。
ロゴも付けずにシンプルを極め、かつ顧客が「良い物」である製品作りをしています。
日本の中小企業の製品で言いますとどうでしょうか。
例えばネットで一度は目にされた方もいるかと思われますが、革製品のココマイスターなどがその筆頭格でしょう。
品質を極めたシンプルな革製品を、従来の流通ルートを通さずオンラインでアフィリエイトを介して販売する。
悪評が広まりやすいオンラインの世界で販売するには、自社の製品やサービスに自信が無ければできません。
ですがあえてこのリスクを負い、自社の製品とサービスに絶対の自信があったからこそオンライン販売するという手法を採り、結果的に顧客が満足しやすい・アフィリエイターも自信を持ってお勧めしやすいという相乗効果を生み出しました。
なぜ「シンプル」が支持されやすいのか。
それは単純に「製品やサービスの水準が良く見える」「分かりやすい」などの効果により、顧客が自らの所有欲やベネフィットを満たしやすいという利点があるからだと言えます。
上記の例は、「ブランド代が乗っかった革製品なんていらない。これみよがしのロゴも恥ずかしい。でも品質は妥協したくない」という顧客のベネフィットに当てはまったと言えるでしょう。
ですが当然ながら、それに見合った品質が無ければあっという間に淘汰されてしまいます。
では、これを経営全体で当てはめてみるとどうでしょうか。
住宅メーカーで考えてみましょう。
・うちは欧風、和モダン、ガレージハウス、打ちっぱなし、ローコスト、何でも建てられます
・うちは在来工法で健康と自然に配慮した家しか建てません
どちらに魅力を感じるでしょうか?
単純に見込み客を囲って契約件数を増やせるのは前者でしょう。
しかし利益を生み出しやすいのは後者であります。
その理由は、「健康と自然に配慮した家を建てたい」人は指名買いに近い状況で後者を選ぶからです。
これがシンプルな経営のメリットの一つであり、大企業にはマネのできない中小企業の強みとなります。
何かに特化する、あるいは専門化するというのは経営リスクの面では好ましいことではありません。
しかしながら、特化あるいは専門化を突き詰めることにより、ニッチ市場でオンリーワンを確立することも可能です。
そして同時に知名度とブランド価値が高まり、「この企業で働きたい」という優秀で意欲ある人材を獲得しやすくなります。
実はシンプルな経営の一番のメリットはこの「人材の獲得」にあり、ひいては持続的競争優位の源泉となります。
当事務所でも人材は経営資源の中でも最重要に位置付けており、今後の競争社会では人材が企業の行く末を左右すると言っても過言ではないでしょう。
何かに特化・専門化することは非常に勇気がいることですが、まずは経営戦略に限らず日常業務の中でも「シンプル」を取り入れてみてはいかがでしょうか。